大炊頭おおいのかみ)” の例文
三十日近くの時の間には、幕府方にくだった宍戸侯ししどこう(松平大炊頭おおいのかみ)の心事も、その運命も、半蔵はほぼそれを聞き知ることができたのである。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
この寛永の大造営には、酒井さかい備後守びんごのかみ永井ながい信濃守しなののかみ井上いのうえ主計頭かずえのかみ土井どい大炊頭おおいのかみ、この四名連署の老中書付、ならびに造営奉行秋元あきもと但馬守たじまのかみのお触れ書が伝えられている。
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
今宵こよい始めて聞いた,娘は今度逗留中かねて世話をする人があッて、そのころわが郷里に滞在していた当国古河こがの城主土井大炊頭おおいのかみの藩士なにがしと、年ごろといい、家柄といい
初恋 (新字新仮名) / 矢崎嵯峨の舎(著)
三月十二日に老中ろうじゅう土井どい大炊頭おおいのかみ利位としつらを以て、抽斎に躋寿館講師を命ぜられた。四月二十九日に定期登城とじょうを命ぜられた。年始、八朔はっさく、五節句、月並つきなみの礼に江戸城にくことになったのである。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
この城廓の大膳だいぜん大夫だいぶであり、大炊頭おおいのかみを以て自ら任じているらしいのです。
大菩薩峠:25 みちりやの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「土井様と云えば譜代も譜代下総しもうさ古河で八万石大炊頭おおいのかみ様に相違あるまいが、さては今夜写山楼へおいでなさるお約束でもあると見える。……それにしてもさすがに谷文晁たにぶんちょう、たいしたお方を客になさる」
大鵬のゆくえ (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
かく一藩が党派を分かち、争闘を事とし、しばらくも鎮静する時のなかったため、松平大炊頭おおいのかみ宍戸侯ししどこう)は藩主の目代もくだいとして、八月十日に水戸の吉田に着いた。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
古河は、土井大炊頭おおいのかみ、八万石、江戸より十六里でございます。
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
大炊頭おおいのかみ殿で、さあさあずっと」
猫の蚤とり武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
宍戸侯ししどこう(松平大炊頭おおいのかみ)の悲惨な最期を序幕とする水府義士の悲劇はようやく世上に知れ渡った。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
古河の町は、八万石土井大炊頭おおいのかみの藩で江戸から十六里。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)