夢魂むこん)” の例文
わが宿りたるはあたかも木曾川の流に沿ひて、へやよりはその流の髣髴を見ることを得ざれども、水聲は近く枕に通ひて、夢魂むこん極めて穩かなりき。
秋の岐蘇路 (旧字旧仮名) / 田山花袋(著)
はたしてそうならば、睡眠すいみん中のいわゆる夢魂むこんによっていわゆる醒覚せいかく中の真意が何処いずこにありしかをうかがうこともできる。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
しかして関翁の夢魂むこん常に遊ぶキトウス山の西、石狩岳十勝岳の東、北海道の真中に当る方数十里の大無人境は、其奥の奥にあるのだ。翁の迦南カナン其処そこにある。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
それをしいて、物静かなうちに、午さがり頃から帝は小机にって昼寝していた。そしていつかうつつないお姿だったが、とつぜん、夢魂むこんまされたご容子で
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
海気は衣をってねむり美ならず、夢魂むこん半夜が家をかめぐりき。
突貫紀行 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
とっさに、彼女のうけた彼の唇は乾いていて火みたいに熱く、羞恥もゆるしておかない気短なあらあらしい動作は、たちまち彼女に夢魂むこんのさけびをあげさせずに措かなかった。
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)