されば女という言葉だけで、いわゆる外面如菩薩げめんにょぼさつ内心如夜叉ないしんにょやしゃという思想を含ませることは、世界を通じて広く行われることである。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
べっぴんびいきのおまえさんは、さぞ耳が痛いことでござんしょうが、とかく美人と申すしろものが、外面如菩薩げめんにょぼさつ内心如夜叉ないしんにょやしゃというあのまがいものさ。
信一郎は外面如菩薩げめんにょぼさつと云う古い言葉を、今更らしく感心しながら、しばらくは夫人の顔を、じっと見詰めていたが
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
「うむ、世間は知らぬ——ことさら、女子衆おなごしゅうはな——外面如菩薩げめんにょぼさつ、内心如夜叉にょやしゃ——という、ことわざがござるに——」
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
「だって、外面如菩薩げめんにょぼさつ、内心如夜叉にょやしゃというんでしょう。あっしは目をつぶって縛りましたよ」
外面如菩薩げめんにょぼさつ内心如夜叉にょやしゃなどいう文句は耳にたこのできるほど聞かされまして、なんでも若い女と見たら鬼かじゃのように思うがよい、親切らしいことを女が言うのは皆なますので
女難 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
ピストルでもあったなら、躊躇ちゅうちょせずドカンドカンと射殺してしまいたい気持であった。犬は、私にそのような、外面如菩薩げめんにょぼさつ内心如夜叉ないしんにょやしゃ的の奸佞かんねいの害心があるとも知らず、どこまでもついてくる。
ただ闇雲やみくもに、外面如菩薩げめんにょぼさつの、噉肉外道たんにくげどうの、自力絶対のと、社会よのなかが変っても、人心や生活くらし様式ありさま推移うつっても、後生大事に旧学にかじりついているのは、俗にいう、馬鹿の一つ覚えと申すもので……。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
外面如菩薩げめんにょぼさつだ。金持、親分、旗本と手玉に取って、自分の縹緻きりょうと才智で、活き仏さまを地獄にり込もうとした女だ。あんな女は石の地蔵さままでモノにする気になるだろうよ」
のみならず、高廉の妻は、いわゆる外面如菩薩げめんにょぼさつ美夜叉びやしゃときている。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「三四人の命を虫けらのように断つ女に、山浦氏が目をかけようか、外面如菩薩げめんにょぼさつ
大江戸黄金狂 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
くくりました。——外面如菩薩げめんにょぼさつ、内心如夜叉にょやしゃ、——恐ろしいことでございましたよ