夕食ゆうめし)” の例文
三千代は下女も留守だと云った。自分も先刻さっき其所そこまで用達ようたしに出て、今帰って夕食ゆうめしを済ましたばかりだと云った。やがて平岡の話が出た。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
いつも帰って来ると上機嫌で饒舌おしゃべりをするのに、今日に限ってうんともすんとも云わずに、黙アって坐りこんで、毒でも食べるように不味まずそうに夕食ゆうめしを食べてさ。
生さぬ児 (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
夕食ゆうめしも食わずに倒れたなり動かずにいた。その時恐るべき日はようやく落ちて、が次第に星の色を濃くした。代助は暗さと涼しさのうちに始めて蘇生よみがえった。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
代助の胸は不安にされて、明らかな返事も出なかった。夕食ゆうめしのとき、飯の味はほとんどなかった。み込む様に咽喉のどを通して、はしを投げた。門野を呼んで
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
その細君は途中から引き返してしまったので、軽い失望の間に、夕食ゆうめしの時間が来るまで、待ち草臥くたびれたせいか、看護婦の顔を見るや否や、すぐ話しかけた。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ところへあいかわらずばあさんが夕食ゆうめしを運んで出る。今日もまたいもですかいと聞いてみたら、いえ今日はお豆腐とうふぞなもしと云った。どっちにしたって似たものだ。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
姉はしまいにやや納得なっとくしたらしい顔つきをして、みんなと夕食ゆうめしを共にするまで話し込んだ。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
例の夕食ゆうめしを我慢して二杯食って、みんなの眼につかないようにそっと飯場を抜け出した。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
平生へいぜいよりは遅くなって漸く夕食ゆうめしの食卓に着いた時、彼は始めて細君と言葉を換わした。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
実は夕食ゆうめしもまだ食わない。いつもなら通りへ出ると、すぐ西洋料理へでも飛び込む料簡りょうけんで、得意なひだの正しい洋袴を、誇り顔に運ぶはずである。今宵こよいはいつまで立っても腹も減らない。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
最前の我多馬車がたばしゃの時のように「御前さん夕食ゆうめしを食うかね」とも聞いてくれない。その癖自分と同じように、きょろきょろ両側に眼を配って何だか発見したいような気色けしきがありありと見える。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
どんな解答にしろ一つこしらえておかなければならないと思いながらも、しまいには根気が尽きて、早く宜道が夕食ゆうめし報知しらせに本堂を通り抜けて来てくれれば好いと、そればかり気にかかった。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)