はなわ)” の例文
其の子は同級のはなわ信一と云って入学した当時から尋常四年の今日まで附添人の女中を片時も側から離した事のない評判の意気地なし
少年 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
誰かが『徒然草』の好い注解本をはなわ検校けんぎょう方へ持ち行きこの文は何に拠る、この句は何よりづと、事細かに調べある様子を聞かすと
このはなわを行けば松が一本あると牛飼いが言った。ハナワは蝦夷語のパワナのなごりで、上の平らな丘のことをいっているらしい。
雪国の春 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
まして当代の人格者はなわ老先生の指導を直々じきじきにうけた門人ならば、なおさら、そう考えるのが当りまえでしょう。加山殿の苦衷くちゅうもお察しする
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
和学講談所(主として有職故実ゆうそくこじつを調査する所)のはなわ次郎という学者はひそかに安藤対馬の命を奉じて北条ほうじょう氏廃帝の旧例を調査しているが
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
品川御殿山ごてんやま英国公使館の焼打、廃帝故事を調査したといわれたはなわ次郎の暗殺、京都ではもうひとつあくどくなって、「天誅てんちゅう」の犠牲の首や耳や手やを書状に添えて政敵のもとへ贈り届ける。
新撰組 (新字新仮名) / 服部之総(著)
「あなた様の仰っしゃる老先生というのは、鶉坂うずらざかはなわ様のことで? ——あの白いひげを胸に垂れた品格のよいご老人のことで」
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いわゆるはなわという地の下の地なり。大かた川添にて水入りの地に限りていうがごとし。『倭名鈔わみょうしょう』に糞堆をアクタフというに同じかるべし云々。
地名の研究 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
「貴方様も、老先生から、ほぼお聞き及びではございませぬか。……あの、はなわ様のご子息郁次郎いくじろう様が、もう近いうちに、長崎からお帰りでございまする」
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しこうして武隈はすなわち高隈かも知れぬ。そうすればはなわというのによく合する。
地名の研究 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
はなわ九郎右衛門、荒木摂津守せっつのかみ、武井夕菴せきあん、そのほか柴田、丹羽、佐久間、蜂屋兵庫守ひょうごのかみなど——何しても、その行装ぎょうそうの壮観、式のおごそかなことは、仰山ぎょうさんともいえるほどだった。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ハナははなわであって川の岸などの迂回をしなければ近よれない地形であった。
地名の研究 (新字新仮名) / 柳田国男(著)