地鉄じがね)” の例文
「たとえ千年二千年たとうが、精がけるようでは名刀の値打はない、この肌を見給え、この地鉄じがねを見給え、昨日湯加減ゆかげんをしたような若やかさ」
ところが近世の新刀となると、これほど錆させたらもうだめですわい。新刀の錆は、まるでたちのわるい腫物できもののように地鉄じがねしんへ腐りこんでいる。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
へしと称し、平打ちにかけてはがねを減らし、刀の地鉄じがねこしらえる。水うちともいう。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「それだから言わぬことではない、一見しては地鉄じがねが弱いようだけれど、よく見ていると板目が立ち、見れば見るほど刃の中に波が立ち、後世の肌物はだものとはまるで違う」
「おらは、ばくちが嫌いだが、つい、地鉄じがねを仕入れる金がすこしばかり欲しかったものだから」
野槌の百 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この和泉守の太刀姿は、地鉄じがねこまやかにつよく冴えて、匂いも深く、若い風情のなかに大みだれには美濃風みのふうに備前の模様を兼ねたおもむきがあり、そのころまず上作の部に置かれていたという。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「模様を一見したところでは、肌が立って地鉄じがねが弱いようにも見受けられる……が」
真雄は、刀の地鉄じがねにする、玉鋼たまはがねを熔かす仕事に、顔まで、ほのおにしているので
山浦清麿 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そは、はじめに地鉄じがねむとき——。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
よろしいか、長さは二尺四寸、ちと長過ぎる故、摺上物すりあげものに致そうかと思ったけれど、これほどの名物にやすりを入れるのも勿体もったいなき故、このまま拵えをつけた、この地鉄じがねの細かにえた板目の波、肌のうるお
大菩薩峠:14 お銀様の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)