嘉納かのう)” の例文
小野篁おののたかむらの「比良ひらの山さへ」と歌った雪の朝を思って見ると、奉った祭りを神が嘉納かのうされたあかしの霜とも思われて頼もしいのであった。
源氏物語:35 若菜(下) (新字新仮名) / 紫式部(著)
われ等は、かの全然瞑想にふけりて、自己の責務の遂行を等閑視とうかんしする、人気取式の神信心を排斥する。神は断じて単なる讃美を嘉納かのうされない。
瑠璃子夫人は、三宅の思い切った断定を嘉納かのうするように、ニッと微笑びしょうもらした。信一郎は初めて、口を入れて、直ぐ横面よこっつらたたかれたように思った。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
大祓おおはらいして解くことができるではないか。我らのしあわせは神仏もご嘉納かのうあらせられるであろうが……」
津の国人 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
サンフラスシスコの郊外こうがいにささやかな道場を開いて、アメリカ人に日本の柔道じゅうどうを教えていたのは、富田常次郎とみたつねじろうだんであった。講道館長こうどうかんちょう嘉納かのうろう先生の最初の弟子でしだ。
柔道と拳闘の転がり試合 (新字新仮名) / 富田常雄(著)
これは新政府行政官から出たもので、主上においても嘉納かのうあらせられたとの意味の通知である。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
帝は、然るべしと、彼の献言を嘉納かのうされんとしたが、尚書の孫資そんしが大いにいさめた。
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ただ我が本師釈迦牟尼仏がこれを嘉納かのうましまして私をして快く最期を遂げしめ給わるようにという観念を起して法華経を一生懸命に読んで居ったです。しかしその日は何事もなかった。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
メルキオルは、その敬意を嘉納かのうせられる思召おぼしめしが大公爵にあるということを、前から匂わしていた。そこで、得意然たるメルキオルは、一刻も猶予ゆうよなく次のことをしなければならないと宣言した。