唇歯しんし)” の例文
壮年期には、大宰大弐だざいのだいにという官職にもついていたし、晩年には日宋貿易の上からも、彼と九州とは、唇歯しんしの関係もただならぬものであったのに。
随筆 新平家 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
実に米国と日本とは商業上の関係においては唇歯しんし相扶あいたすけ、輔車ほしゃ相倚あいよる好兄弟といわざるべからず。
将来の日本:04 将来の日本 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
南部の南洋群島、フィリッピン、西部の印度、大陸に接する安南、緬甸ビルマ、香港、澳門マカオまたすでに彼白人の勢力にして、なお、未だ白人の雄心死せざるなり。日と中とは同種同文、唇歯しんしる。
上海 (新字新仮名) / 横光利一(著)
蜀には山川の嶮あり、呉には三こうの固めありです。これを以て、唇歯しんしの提携をなすのに、なんの不足不安がありましょう。
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
次には不寝番ねずのばんの物々しい警戒だった。今朝になって、それとなく訊くと吉良家とは、唇歯しんしの家がらである上杉弾正太弼たいひつの夜襲に備えるものと分った。
べんがら炬燵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
今もし玄徳のために蜀が敗れたら、必然、そのあとは漢中の危機となることは、両国唇歯しんしの関係にある地勢歴史の上から見てもあきらかなことですのに
三国志:09 図南の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
どうか、ほこを収めて、以前の親善を呼びもどし、呉に帰っている呉妹夫人を、もういちど蜀の後宮へれられて、長く唇歯しんしの国交を継続していただきたい。
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
魏王曹操も、非をさとり、貴国と長く唇歯しんしよしみを結んで、共に玄徳を討たんという意思を抱いておられます。
三国志:09 図南の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
もし両者にして、唇歯しんしよしみと、相互の軍事協約をむすび、早くより望みを中原ちゅうげんにすすめたなれば……おそらく、今日の世は、よほど違っていたことは確かでおざろう
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「以前のよしみを温めて、徐州と小沛しょうはいを守り合い、唇歯しんしの交わりを以て、新たに義を結びたまえ」
三国志:04 草莽の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
すると、敵の七城の位置と、主城の高松と、唇歯しんしの関係をなしている地勢が一目にわかる。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
前田又左衛門利家としいえこそ、北陸では無二の同心の者だし、北陸の一の木戸でもあるゆえ、せっかく充分に意志の疎通を計られて、唇歯しんしのお交わりあるようにとも云い添えている。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
由来、北と南とは、唇歯しんしの関係にあるわけだが、内実では、どうしても対立的になった。
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「それがしは近江だが、御両所には領地隣りだ。事あらば、唇歯しんしなかとなって扶け合わねば両立しえぬお立場にある。過去一切は水にながして、心からお親しゅうして行かれたいもの」
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「この後は、長く唇歯しんし好誼よしみをふかめ、共々、漢室の宗親たる範を天下に垂れん」
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それを機会にむすばれた両国の唇歯しんしよしみは、いまなお持続されている。
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
急に、婚約の儀を蒸し返して、袁術へ、唇歯しんしの交わりを求める裏には
三国志:04 草莽の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
呉と荊州とは、唇歯しんしの関係にあるし、姻戚いんせきの義理もある。——依って駈けつけねばならないが、魏の曹軍に対しては、いかんせん兵力も兵粮ひょうろうも足らない。精兵三、四万に兵粮十万石を合力されたい。
三国志:09 図南の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)