名媛めいえん)” の例文
彼は既にその弟ジュウルと共に仏国十八世紀の貴族名媛めいえんおよび女優の史伝を編み、また同時代の仏国絵画の評論三巻を合著がっちょせり。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
この曲を良人おっとシューマンのために精一杯いて、その頃の無理解な——あるいは無理解をよそおわんとする聴衆を説得せんとした、名媛めいえんクララ夫人の努力が今にしのばれてゆかしい。
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)
この歌は、平安朝に艶名えんめい一世いっせあっした、かりけるわらべあおをかりて、あをかりしより思ひそめてき、とあこがれたなさけに感じて、奥へと言ひて呼び入れけるとなむ……名媛めいえんの作と思う。
春昼後刻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
新聞に新郎新婦のことがく出ている。黒枠も拝見するが、斯ういう芽出度い記事にも一応目を通す。何も社会観察である。新郎は必ず大学出の秀才で、新婦は例外なく才色兼備の名媛めいえんだ。
親鳥子鳥 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
かつて俗流にびるジェスチュアをさえ示さず、やや気むずかしく、さびしい作曲——が、それはなんという芸術的な美しいものであったろう——を書き続けたのは、名媛めいえんクララの理解と
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)