可怖こわ)” の例文
其那にじき驚いたり可怖こわがったりするようなら彼女は偉いジェラルド太守の夫人にふさわしくありますまい、どうか思いつきを遂げさせて下さい。
ところが所天つれあいくなってからというものは、その男の怨霊おんりょう如何どうかすると現われて、可怖こわい顔をして私をにらみ、今にも私を取殺とりころそうとするのです。
運命論者 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
そんな事はあるまいと、可怖こわいながら疑いを挾んでいた私は、この叫びで、一どきに面していた危険の大きさを感じ、思わずぞっとしたのであった。
私の覚え書 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
これは露西亜ロシアつねに知らぬ犬を呼ぶ名である。「シュッチュカ」、来い来い、何も可怖こわいことはない。
『何だか知らないけれど、可厭な人ですねえ……あらッ、彼方あのかたを御覧なさいよ、可怖こわいわ。』
昇降場 (新字新仮名) / 広津柳浪(著)
それがさ、活きた心地はなかった、というのに、お前さん、いい度胸だ、よく可怖こわくないね、といいますとな、おっかさんに聞きました、かんざしを逆手に取れば、婦は何にも可恐こわくはないと
遺稿:02 遺稿 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そこに可怖こわい程なリアリストとして心理のモメントを捕えている作家バルザックの慧眼を感じるのであるが、さて
バルザックに対する評価 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
各箇いくつかの団体の、いろいろの彩布の大旗小旗の、それが朝風に飜って居る勇しさに、凝乎じっ見恍みとれてお居でなさった若子さんは、色の黒い眼の可怖こわい学生らしい方に押されながら、私の方を見返って
昇降場 (新字新仮名) / 広津柳浪(著)
今九時すこし前で、私はおどろの髪をふり乱してこれを書いて居ります、そうかくと可怖こわいでしょう? 髪を洗ったのさっき。そしてそれがかわく迄これを書こうというわけです。
何か可怖こわし。可怖し。生活はこのままで何年もつづくと思われず。