古袴ふるばかま)” の例文
粗末な着物に古袴ふるばかまをはき、右手をふところに入れたまま、彼は左手で、かぶっていた編笠を静かにぬいだ。
けれど其古風な門は依然たる昔のまゝで、自分は小倉こくら古袴ふるばかまの短いのを着、肩をいからして、得々とく/\として其門に入つて行つたと思ふと、言ふに言はれぬなつかしい心地がして
重右衛門の最後 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
この方から逆寄さかよせして、別宅のその産屋うぶやへ、守刀まもりがたな真先まっさきに露払いで乗込めさ、と古袴ふるばかま股立ももだちを取って、突立上つッたちあがりますのにいきおいづいて、お産婦をしとねのまま、四隅と両方、六人の手でそっいて、釣台へ。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
けやすき糸の乱れの古袴ふるばかま 正巴せいは
俳諧大要 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
八畳の一間で、長押なげしの釘には古袴ふるばかまだの三尺帯だのがかけてある。机には生徒の作文の朱で直しかけたのと、かれがこのごろ始めた水彩画の写生しかけたのとが置いてあった。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)