古蓆ふるむしろ)” の例文
大きな声を張りあげてときをつくり、あまつさえ古蓆ふるむしろのように引きむしられたはねでバタバタと羽搏はばたきをやらかしていた。
折からあの焚き捨てた芥火あくたびが、まだ焔の舌を吐いているそのかすかな光に透かして見ますと、小屋はどれよりも小さいくらいで、竹の柱も古蓆ふるむしろの屋根も隣近所と変りはございませんが
邪宗門 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
積悪の応報覿面てきめんの末をうれひてかざる直道が心のまなこは、無残にもうらみやいばつんざかれて、路上に横死おうしの恥をさらせる父が死顔の、犬にられ、泥にまみれて、古蓆ふるむしろの陰にまくらせるを、怪くも歴々まざまざと見て
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
二人は真暗な中を手さぐりであり合せの古蓆ふるむしろわらをよせ集めてどっかと腰をえた。妻は大きな溜息をして背の荷と一緒に赤坊を卸して胸に抱き取った。乳房をあてがって見たが乳は枯れていた。
カインの末裔 (新字新仮名) / 有島武郎(著)