古狐ふるぎつね)” の例文
金眸は朝よりほらこもりて、ひとうずくまりゐる処へ、かねてより称心きにいりの、聴水ちょうすいといふ古狐ふるぎつねそば伝ひに雪踏みわげて、ようやく洞の入口まで来たり。
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
あるいはまた、夜な夜な、往来の人をおびやかす朱雀門すざくもん古狐ふるぎつねが、かわらの上、草の間に、ともすともなくともすという、鬼火のたぐいであるかもしれない。
偸盗 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
その家にてはいかにも奇怪に思い、一夜主人が「あなたはどちらのお方ですか」とたずねたれば、「今夜は実を明かして申さん。われは当市外に住する古狐ふるぎつねである」
おばけの正体 (新字新仮名) / 井上円了(著)
むかしむかし、あるところに尻尾しっぽの九本ある古狐ふるぎつねがいました。古狐は、じぶんのおくさまが心がわりしたのではないかとうたぐって、おくさまをためしてみることにしました。
が番頭の話を聞くと、直ぐに横から口を出したのは、古狐ふるぎつねと云う渾名あだなのある、狡猾こうかつな医者の女房です。
仙人 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)