しか)” の例文
旧字:
その折松風氏は卓子テーブルに頬杖をついてこくり/\居睡ゐねむりをしてゐたが、店員が入つて来たのを見ると、急にしかつべらしい顔をして相手を見た。
「なに、千円をくれる。そんな物は貰ふわけにかない。」裁判官はわざわざ取つておきのしかつべらしい顔をして言つた。
藤原氏は予言者のヨハネのやうなしかつべらしい口もとをして言つた。たつた一つヨハネと違ふのは、いなごの代りに今のさきお茶をすゝつた事だつた。
巡査はくだんの露西亜人を警察署に連れ込むだ。暫くすると、さつき手を拭いたばかしの米国国旗が、その前に持ち出された。巡査はしかつべらしく言ひ渡した。
「本は解つとる。」将軍は蟹のやうにしかつべらしい顔をした。「だが、何の本だと訊いとるのぢや。」
和尚は、それを一堂に集めて、しかつべらしい顔をして言つた。夏分の修養は、何よりも涼しく、おまけに手軽でなくてはならない、それには各自に放屁するに限る、と。
茶話:12 初出未詳 (新字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
そして出来るだけしかつべらしい顔をしながら、腹のうちでは細君のあかい唇や、昨夕ゆうべ食つた西洋菓子の事などを思ひ浮べながら、肝腎の五千円の用談は少しも考へてゐなかつた。
牧師の女房が時々嘘をくやうに、しかつべらしい顔をした懐中時計が、ちよいちよい人を引つ掛ける事があるもので、鼠骨氏は停車場ていしやぢやうの柱時計と自分の懐中時計とを見比べて
生徒達は済まなかつたやうに、そつと溜息をいて、先生のしかつべらしい顔を見た。