半玉はんぎょく)” の例文
青銅からかねの鳥居をくぐる。敷石の上に鳩が五六羽、時雨しぐれの中を遠近おちこちしている。唐人髷とうじんまげった半玉はんぎょく渋蛇しぶじゃをさして鳩を見ている。
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
おたみの姿態と容貌ようぼうとは、そのどこやらに、年をかくしている半玉はんぎょくなどによく見られるような、早熟な色めいた表情が認められたからである。
ひかげの花 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
その騒ぎが大きくなりすぎたと思われる頃になると、鈴江という半玉はんぎょくみたいな女給が青い顔をして皆のところへやって来る。
電気看板の神経 (新字新仮名) / 海野十三(著)
町の芸者や半玉はんぎょくなども数名座にはべったのですが、彼女等もそれぞれ引取って了い、客は菰田邸に泊るものもあれば、それから又どこかへ姿を隠すものもあり、座敷は引汐ひきしおの跡の様で
パノラマ島綺譚 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
それでも安お召などを引張った芸者や、古着か何かの友禅縮緬ゆうぜんちりめん衣裳いしょうを来て、まだらに白粉おしろいをぬった半玉はんぎょくなどが、引断ひっきりなしに、部屋を出たり入ったりした。鼓や太鼓の音がのべつ陽気に聞えた。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
「朝から、半玉はんぎょくが出るなんて、いい景気だこと」
かんかん虫は唄う (新字新仮名) / 吉川英治(著)
宇都宮とやら高崎とやらにて半玉はんぎょくに出てゐたりしがその後のわけは知らず去年帰つて来てこの土地から出たとの事。
桑中喜語 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
一体、鈴江という女は、春ちゃんの死後そのいいひとだった岡安と馬鹿に仲よくなったようだ。この女は、半玉はんぎょくみたいな外観を呈しているかと思うと、年増女の言うような口をきくことがあった。
電気看板の神経 (新字新仮名) / 海野十三(著)