北国ほくこく)” の例文
旧字:北國
立待崎たちまちさきから汐首しほくびみさきまで、諸手もろてを拡げて海を抱いた七里の砂浜には、荒々しい磯の香りが、何はばからず北国ほくこくの強い空気に漲ツて居る。
漂泊 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
今でこそ、立派な医者もあり、病院も出来たけれど、どうして城下が二里四方にひらけていたって、北国ほくこくの山の中、医者らしい医者もない。
薬草取 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
黄い埃塵が北国ほくこくの冬の吹雪のやうに堅くとざしたホテルの硝子窓の内までザラザラと吹き込んで来るのを見た。
(新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
拙僧わし北国ほくこくの雲水でござるが、得庵先生御在宅なら、暫く御意を得たいと思ひまして……」
……さて、あたれば、北国ほくこく山中さんちゆうながら、人里ひとざと背戸せど垣根かきねに、かみかせたもゝさくらが、何処どこともそらうつらう。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
名だたる北国ほくこく秘密の山、さもこそと思ったけれども
薬草取 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)