勘太郎かんたろう)” の例文
勘太郎かんたろうはそうひとりごとを言って、それから土間どまの柱をよじ上って、ちょうど炉端ろばたがぐあいよく見えるあなのあいている天井の上に隠れた。
鬼退治 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
見損みそこなっちゃあいけねえぜ、おい。此店ここのまんじゅうみてえに、白ぶくれにふくれていやがって。那珂川原なかがわら勘太郎かんたろうを知らねえのか、てめえは」
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
実の熟する時分は起き抜けに背戸せどを出て落ちた奴を拾ってきて、学校で食う。菜園の西側が山城屋やましろやという質屋の庭続きで、この質屋に勘太郎かんたろうという十三四のせがれが居た。勘太郎は無論弱虫である。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
現今いま私のうちる門弟の実見談じっけんだんだが、所は越後国西頸城郡市振村えちごのくににしくびきぐんいちふりむらというところ、その男がまだ十二三の頃だそうだ、自分のうちき近所に、勘太郎かんたろうという樵夫きこり老爺おやじが住んでいたが、せがれは漁夫で
千ヶ寺詣 (新字新仮名) / 北村四海(著)
盗まねえものが此所こゝに有るものか、おらまんまア喰って魂消たまげめて居たそばに置いた荷物がえ、何より中の品物が証拠だ、麦藁細工の香箱が七つに御守がある、そりゃア村の多治郎たじろう勘太郎かんたろう新藏しんぞう
この話を天井てんじょうで聞いていた勘太郎かんたろうは「しめた」と思った。するとその時、大将たいしょうおにが鼻を天井に向けてもがもがさせながら
鬼退治 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
山城屋とは質屋の勘太郎かんたろうの屋号と同じだからちょっと面白く思った。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
みんな勝手なことを言って勘太郎かんたろうをからかったが、勘太郎はそんなことは耳にも入れず、身じたくをすると獲物えものひとつ持たずに光明寺こうみょうじへ出かけて行った。
鬼退治 (新字新仮名) / 下村千秋(著)