こふ)” の例文
「やつて見ませう。あの味噌擂用人なんか、何處かの縁の下にこふを經た、がまの精か何んかに違げえねえと思ふんだが」
身に染み込んだ罪業ざいごふから、又梟に生れるぢゃ。かくごとくにして百しゃう、二百生、乃至ないしこふをもわたるまで、この梟身を免れぬのぢゃ。つまびらかに諸の患難をかうむりて又尽くることなし。
二十六夜 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
宜しく大劫だいこふ銷除せうぢよする有るべし。元来大劫なるものは水火刀兵の災に過ぐるものはない。このこふに遇ふものは賢愚ともに滅びてしまふ。福善禍淫の説も往往此に至つて窮まるものである。
鴉片 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
そんな人の心の奧の奧まで、まるでてのひらを指すやうで、——女のこふを經たのは、全く氣味の良いものぢやありませんね
「何んにもありませんね。尤も、あの下女のお友といふのは出戻りださうで、世帶の苦勞も情事いろごとの苦勞もこふが經てゐますから、妙なところへ眼が屆きますよ」
「聽きしに優ると來たか、お前の學もいよ/\こふを積んで、近頃は俺にもわからねえことがあるよ」
「八五郎の嫁になりたいといふ茶汲女でもあるのかい。こふたのはいけないよ」
素的だ、化物退治にそんな筋のがあるぜ、——血の跡を慕つて行くと、洞穴ほらあなの中に、猅々ひひこふを經たのが、手傷を受けて唸つて居たとね——ところが、こいつはそんな都合には行かないよ。
「芝居だよ、これは。惡者もこれ位こふを經ると、いろ/\な藝當をする」
「その男やもめも五十二年續くとこふを經てたゝりをなす」