分捕ぶんどり)” の例文
途中に分捕ぶんどりの大砲が並べてある。その前の所が少しばかり鉄柵てつさくかこい込んで、鎖の一部に札ががっている。見ると仕置場しおきばの跡とある。
倫敦塔 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
左右の膝に置いた手が分捕ぶんどりスコップ位ある上に、木乃伊ミイラ色の骨だらけの全身を赤い桜の花と、平家蟹の刺青ほりもので埋めているからトテモ壮観だ。
超人鬚野博士 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
この頃であったろう、学校から帰えると、私はいつも城の下に蝶々を採りにいったが、田村軍曹に蝶々二十匹位分捕ぶんどりされて泣いたこともあった。
私の子供時分 (新字新仮名) / 伊波普猷(著)
今の政治家実業家などは皆提灯を借りて蝋燭を分捕ぶんどりする方の側だ。もっともづうづうしいやつは提灯ぐるみに取つてしまつて平気で居るやつもある。
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
二人は仲よく手をつないで、会場にならんでいる、分捕ぶんどりの中国兵器やソ連兵器を、ていねいに見てまわった。
人造人間エフ氏 (新字新仮名) / 海野十三(著)
ひどい事だ。自分の土蔵でも無いものを、分捕ぶんどりして渡す口約束で博奕を打つ。相手のものでも無いのに博奕で勝ったら土蔵一戸前受取るつもりで勝負をする。
蒲生氏郷 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
前のは御自分ものであろうが、扱帯しごきの先生は、酒の上で、小間使こまづかいのを分捕ぶんどりの次第らしい。
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
日清戦争中、山地中将が分捕ぶんどりの高価の毛皮の外套を乃木少将に贈ったら、少将は、傷病兵しょうびょうへいにやってしまった。此事を新聞で読んだのが、乃木のぎ希典まれすけに余のインテレストを持つ様になった最初であった。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
累世よよ珍宝たから分捕ぶんどりなし
鬼桃太郎 (新字新仮名) / 尾崎紅葉(著)
おまけに眼鏡を忘れて来ている面付つらつきのまずい事。分捕ぶんどりスコップに洋服を着せたってモウすこしは立派に見えるだろう。
山羊髯編輯長 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
低い、うねりを打ったような丘陵続きの海岸に近く五そうの水雷駆逐艇が、重なり合って碇泊している。その横に三号活字でベタベタと「呉淞ウースンに着いた分捕ぶんどり独逸ドイツ潜水艇」
山羊髯編輯長 (新字新仮名) / 夢野久作(著)