出会でつくは)” の例文
旧字:出會
かれも昨日の夕、帰つて来る松原の一角でその女学生風の女が向うから歩いて来るのにふと出会でつくはしたことを思ひ起した。
波の音 (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
び/\にんでゐるうち、一なにかでんだおぼえのある恋愛論れんあいろん出会でつくはしなどするのであつたが、ハイカラな其青年そのせいねん面目めんもくが、さきえるやうである。
背負揚 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
三人の女傘かさが後になり先になり、穂の揃つた麦畑むぎばたの中を、睦気むつましげに川崎に向つた。恰度鶴飼橋の袂に来た時、其処で落合ふ別の道から来た山内と出会でつくはした。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
で何かの会合で知合に出会でつくはすと、鼻先を見る前に(実業家といふものは、いねと同じで、鼻先さへ見ればその日の機嫌がわかるものだ)先づ頭髪あたまへ気をつける。
日常生活の他の方面では、胸をクワツとさせるほど、憤慨したりする事の稀な彼も、電車の中ではよくさうした機会、或はそれに近い機会に出会でつくはす事が多かつた。
我鬼 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
すつかり変つて了つた。もう元のやうな姿はなくなつた。そして、いつでもお経べい読んで御座らつしやる。此間、本堂の前で出会でつくはしたから、お辞儀を
ある僧の奇蹟 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
そんなのに出会でつくはした場合、大抵の著作家は郵便切手だけは預りつ放しにして、一切取合はない。
一人ひとりも、一個ひとつも、一度ひとたびも、出会でつくはした事がない。
葬列 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
少し気難きむづかしい日にでも出会でつくはすと相手が誰であらうと、よしんばサンタ・クロースのやうなにこ/\爺さんであらうと、氏は委細構はずいきなり自分の診察室に引張り込んで
あれは狭斜あたりでよく出会でつくはす男女の関係にさへ似てゐる。
通俗小説 (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
自分より強いものに出会でつくはしたら、逃げたが勝だといふ事はいぬもよく知つてゐる。馬鹿者の多い世の中に、狗の知つてゐる事をわきまへてゐる人間は先づ悧巧者とせなければならぬ。