内兜うちかぶと)” の例文
軽蔑なさるからコンナ事になるのです。伜には内兜うちかぶと見透みすかされる、女将には冷やかされる……
超人鬚野博士 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
すると紅庵は、さういふ伊東伴作の内兜うちかぶとを見透したやうな穿つた調子で再び言葉をつぎたし
雨宮紅庵 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
なか/\他人の中へ突出されて、内兜うちかぶと見透みすかされねえやうに遂行やりとげるのは容易ぢやねえ。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
古代を笑ふ近代マニヤ連中の内兜うちかぶとは、すつかり見透しなのだからね。あの連中の傲慢ごうまんな表情はじつは裏返された卑屈感と焦躁しょうそうにすぎない。あの連中とはつまりわれわれのことだ。
夜の鳥 (新字旧仮名) / 神西清(著)
自分から進んで内兜うちかぶとを見透かされたようなもどかしさはいっそう葉子の心を憤らした。
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
しかし、言葉はまさにこの秋草を描いた襖のあなたからほとばしり出たのに違いないのですから、一旦は狼狽したが、もとより相当な奴ですから、ここらで内兜うちかぶとを見せるようなことはない。
大菩薩峠:37 恐山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
実家の奴等に笑われようと、彼女に内兜うちかぶとを見透かされようと、出かけて行って平詫りに詫まって、姉や兄貴にも口添えを頼んで、「後生一生のお願いだから帰っておくれ」と、百万遍も繰り返す。
痴人の愛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
はゞゆるさじとひもすまじ他人たにん内兜うちかぶと
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
こちらがながめるより先に、先方は敵の提灯で、敵の内兜うちかぶとを見定めたと覚しく
大菩薩峠:21 無明の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
すぐに甲板デッキへ引っぱり上げられて先ず一杯、先ず一杯と盃責めにされる。モトヨリ内兜うちかぶとを見せる吾輩ではなかったので、引つぎ引つぎ傾けているうちに、忘れるともなく友吉親子の事を忘れていた。
爆弾太平記 (新字新仮名) / 夢野久作(著)