光鋩こうぼう)” の例文
死者の枕頭ちんとうに刃物を置く習慣は、その刃物の光鋩こうぼう、もしくは、その形状の凄味すごみより来る視覚上の刺戟暗示を以て
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
遠い天星てんせいの青光りが、ギラッとつづらの側によれ合った。一方のつづらへは有村の剣! ひとつのほうへは天堂一角が、今にも突き出さんとめ澄ます光鋩こうぼう
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
探海燈の光鋩こうぼうが廻って来ると、塀をじ登っている群衆の背中が、ありのように浮き上った。
上海 (新字新仮名) / 横光利一(著)
自然に備わる威力に打たれたのでしょう、太刀と虎鋏は、なく光鋩こうぼうを納めます。
礫心中 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
光鋩こうぼう一つ動かない。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
すべてその事蹟明らかでないが、卜伝、伊勢守などの興った天文、永禄よりはずっと以前、室町の中世期において、発祥の光鋩こうぼうを曳き、そして歿し去っている先人達であった。
随筆 宮本武蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
丘の花壇は、魚の波間に忽然こつぜんとして浮き上った。薔薇と鮪と芍薬しゃくやくと、鯛とマーガレットの段階の上で、今しも日光室の多角な面が、夕日に輝きながら鋭い光鋩こうぼうを眼のように放っていた。
花園の思想 (新字新仮名) / 横光利一(著)
すると、名刀の光鋩こうぼうが、董卓の側なる壁の鏡に、陽炎かげろうの如くピカリと映った。
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
工部局の機関銃隊が工場の門前に到着した時は、や彼らの姿は一人として見えなかった。ただ探海燈の光鋩こうぼうが空で廻るたびごとに、血潮が土の上から、薄黒くあざのように浮き上って来るだけだった。
上海 (新字新仮名) / 横光利一(著)