なり)” の例文
半「そんな事を云ってもいかんよ、悪事を平気な泥坊とはいいながら、目をまわしたなりお蘭さんを此の本堂の下の石室いしむろの中へ生埋いきうめにしたね」
「うむ。長かったのう。あの歌をば聞きおるうちに俺あ、悲あしゅう、情のうなった。この間死んだかかあが、真夜中になると眠ったなりにアゲナ調子で長い長い屁をばきよったが」
近世快人伝 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
この紋がねえ、三蓋松に実の花菱が、そっくり象嵌ぞうがんで出て居るってんだ、こいつア妙じゃアございませんか、これが突込つっこんだなりで有るんでがすが
松と藤芸妓の替紋 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
……俺は五体中を火傷やけはたしたなり今朝けさ、製鉄所の病院で息を吹きかやいた。
オンチ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
とザブリ水を打掛ぶっかけて其のなりにお香剃こうずりの真似をして、暗いうちに葬りに成りましたから、誰有って知る者はございませんが、此の種を知っている者は土手の甚藏ばかり
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
男部屋の杉戸をしずかに閉って懐中から出して抜いたのは富五郎を殺害せつがいして血に染まったなり匕首あいくち、此の貞藏があっては敵討の妨げをする一人だから、貞藏これから片付けようというので
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)