僻論へきろん)” の例文
それにかかわらず安陵竜陽みな凶終するよう論ずるは、性慾顛倒の不男ぶおとこや、えくぼを売って活計する色子野郎ばかりに眼をさらした僻論へきろんじゃ。
それに梅子などはどうやら其の僻論へきろんに感染して居るらしいので、おほいに其の不心得を叱つたことだ、ことに近頃彼女あれの結婚について相談最中のであるから
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
彼がそれらの僻論へきろんを信じていることは明らかになった。それにたいしては前ほどは笑えなかった。彼は冒涜ぼうとく者だった。
しかるに、ひとり有限の知力を崇拝して無限の存在を否定するは、その僻論へきろんなること知るべきなり。
迷信と宗教 (新字新仮名) / 井上円了(著)
うかがわないと、そういうことは、いくら学者の議論にしたところが、一概には承服でき兼ねます、一概どころではない、本来、一も二もなく排斥さるべき僻論へきろんですよ——
大菩薩峠:38 農奴の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
ついでながら、断片的な通俗科学的読み物は排斥すべきものだというような事を新聞紙上で論じた人が近ごろあったようであるが、あれは少し偏頗へんぱ僻論へきろんであると私には思われた。
自由画稿 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
「山登りが親不孝ってのは極端だろう。そんな僻論へきろんは通らない」
妻の秘密筥 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)