えら)” の例文
えらい、傑い。その武士も傑いが、ヤッちゃんもまけずに傑いぞ。小錦関こにしきぜきだ、やがてした開山かいさんの小錦関だ。」
これを以て蛇色は地を逐い茅兎かやうさぎ(茅の中に住む兎)は必ず赤く鷹の色は樹に随うと概論したはなかなかえらい。
これで今度の戦争に勝てるというえら御機嫌ごきげんだという話を、実際にその人に会って来た友人から聞いた。
千里眼その他 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
しかし、そう云うけれど、あの人はえらいにちがいない、何故なら、彼はかくかくの位階勲等を帯している、と。おこぼれを頂戴ちょうだいしたその成りあがりものはそう自己弁護するのだ。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
「そうじゃ、そのえらい先生の魚心堂である。どうだ、降参するかナ」
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
直木氏がずつとえらくなつてから、この人これで仲々えらいと、みんなの前でいつてしまつたら、苦笑もせず、なかなかこれで傑いか? と繰返してつぶやくやうに言つてゐた。
三十五氏 (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
中小業者の没落を、あの時代から見通していたのであるから、なかなかえらい母であった。これは冗談でなく、その後も時々ちゃんとした見通しをつけるので、感心したことがある。
私の履歴書 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
「やっぱり、しかし、黒田さんはえらいですよ、そうお思いになりませんか?」
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
しかし子供ごころに、オッペケペッポの川上はさほどえらい人だと思っていなかった。それよりも芳町の奴の方がはるかに——芸妓でもかかぐるまのある——傑い女だと思っていた。
マダム貞奴 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
この事件の解決には先生の人としてのえらさがよく出ていると思われるのである。
球皮事件 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
かわらたまとおもう愚者でないかぎり、他人にはえらい夫も、妻は物足らぬそこを知るものだ。貞奴と川上との間だけがそれらの外とはいえない。それですら貞奴は夫を傑いと思っていた。
マダム貞奴 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
「あの人はあれで学者のえらい先生なんですってね、男衆おとこしゅかと思ったら」
松井須磨子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)