あざむ)” の例文
旧字:
「それその通り、わらわをあざむこうとするではないか。汝の妹にせよ、彼女はわらわの子。玄徳へ嫁がすことなどいつ許しましたか」
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「いや、それなら知ってるよ。だが、そいつあ表向き、お上をあざむく手段じゃねえのか」
名人地獄 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
したが事は焦眉しょうびの急です、背に腹はかえられず、あなたをあざむいてこれへ迎え、鉤鎌かぎかまノ鎗の製法、またその鎗のつかいかた、併せて二つを、ここの者へご伝授していただきたい
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「これこそ倶係震卦教ぐけいしんけきょう、敵の眼をあざむき隠したが、悟られもせず健在健在! いざやこれより木食もくじき仙人を訊ね、教理の解釈秘法の修行を、つぶさにご教授願わねばならぬ! あら有難や!」
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
しないでも峰阿弥は問わず語りに喋舌しゃべりつづけるので気づまることはないが、余りにも怖ろしい話だった、というて耳をおおおうとすればかえって自身をあざむく気もちが自身を責める
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「稀代な曲者くせものめ。この曹休をあざむくため、おのれはつまで切って謀略の具に用いたか……ウウム何の、たとい計るとて何ほどのことやあるべき。張普ちょうふ、麓に見える呉兵どもを蹴ちらして来い」
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
だが、この怒りは、卑劣だとかあざむかれたとか、対人的に怒っているのではない。元より虫けらのような鼠賊そぞくと思いながら、社会的にゆるしておけない気持がする。いわゆる公憤なのである。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)