俗名ぞくみょう)” の例文
お露がじぶんのことを思いつめて、其のために病気になって死んだと云うことを聞いたので、それ以来お露の俗名ぞくみょうを書いて仏壇に供え
円朝の牡丹灯籠 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
喜三郎はその、近くにある祥光院しょうこういんの門をたたいて和尚おしょうに仏事を修して貰った。が、万一をおもんぱかって、左近の俗名ぞくみょうらさずにいた。
或敵打の話 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
と思うとカッと逆上のぼせて来て、根が人がよいから猶々なお/\気が欝々うつ/\して病気が重くなり、それからはお嬢の俗名ぞくみょうを書いて仏壇に備え、毎日々々念仏三まいで暮しましたが
しかる後、また死んだもののために小さな位牌いはいを作った。位牌には黒いうるし戒名かいみょうが書いてあった。位牌のぬしは戒名を持っていた。けれども俗名ぞくみょう両親ふたおやといえども知らなかった。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「昭和四年二月十八日歿ぼっす、俗名ぞくみょう宗清民そうせいみんの霊……」
西湖の屍人 (新字新仮名) / 海野十三(著)
俗名ぞくみょう川手庄太郎」「昭和十三年四月十三日歿」
悪魔の紋章 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「旅の御僧、もはやそなたへの疑いは晴れ申したが、さるにても、斯様かようは怪物を見事に御退治めされたとは、尋常よのつねの出家ではござるまい、お差しつかえなくば、俗名ぞくみょうをうけたまわりたい」
轆轤首 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)