係累けいるい)” の例文
そんな孫どもや子息やまた、それにつながる係累けいるいの救われない生活ぶりを眺めていると、太政入道は、時にひとりいきどおろしくなって
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
滞留のあまりに久しければ、さまざまの係累けいるいもやあらんと、相沢に問いしに、さることなしと聞きてちいたりとのたもう。
舞姫 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
少しも家族的係累けいるいのない私にとっては、当時役所から貰っていた月給は、女一人のつましい生活をささえるには十分だったし、その安価な代償を払えば
秘密 (新字新仮名) / 平林初之輔(著)
田も、畠も、金も、係累けいるいもなくなってしまった。すきなところへとんで行けた。すきな事をやることが出来た。
浮動する地価 (新字新仮名) / 黒島伝治(著)
小さい家庭の係累けいるいなどのためにこの若い燃ゆる心を犠牲にするには忍びないと思う。この間も郁治と論じた。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
「よろしい。では給料の点は儂にまかしておくがいい、それから君は何日何時でも旅行に出られるだろうね。儂が新聞広告で係累けいるいのない人間を求めたのはそうした理由だよ」
日蔭の街 (新字新仮名) / 松本泰(著)
だが、私の係累けいるいは、ことごとく、私より若く、強い。矢張り、私は働きづめに死ぬのだろう。
死までを語る (新字新仮名) / 直木三十五(著)
不思議なことに、先代の赤耀館主人であった私の亡兄丈太郎の妻、つまり私にとってはあによめにあたる綾子あやこも、係累けいるいの少い一人娘だったのです。嫂にはめいに当る梅田百合子というのが唯一の親族でした。
赤耀館事件の真相 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「しかし惣領は係累けいるいがあるぜ。跡を取るから責任が重い」
求婚三銃士 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
蘇武の場合は違う。彼にはこの地での係累けいるいもない。
李陵 (新字新仮名) / 中島敦(著)
「かえって、係累けいるいがなくって気楽ですね」
水郷異聞 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
平家の残党、木曾の残党、義経の残党、その一門係累けいるいはことごとく世間にすがたは消していても、どこかで呼吸し、何かのかたちで、更生にもがいている。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
東洋の人情風俗に精通せる、係累けいるいなき青年紳士を求む、当方住込
日蔭の街 (新字新仮名) / 松本泰(著)
(自分は、播州ばんしゅう牢人、係累けいるいもなく少しばかり学問をこころざして、京都や江戸に学んだから、この土地で行く末は、良い塾でも持って落着きたいと思う)
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
血まようた平家の衆は、源氏のもの憎しの一図いちずで、およそ、源家の係累けいるいのものと聞けば、婦女子でも、引っからげて、なにかの口実をとって必ず斬りまする
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
どんな係累けいるいを持っている者か、などということは、知らなかったに違いないが、御厨の渡辺天蔵といえば、小六のおいにあたる者で、同時に、彼の土豪的勢力を構成している一族の
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そうした敗者の係累けいるい一門、その家族らまでを合せればどれほどな数かわからない。
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)