侍坐じざ)” の例文
片口は無いと見えて山形に五の字のかれた一升徳利いっしょうどくりは火鉢の横に侍坐じざせしめられ、駕籠屋かごやの腕と云っては時代ちがいの見立となれど
貧乏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
あがられ、その折、侍坐じざしておられた筑前どのが、挨拶に見えた千宗易を一見されて——これは名器めいきだ——と仰っしゃったそうな
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
侍坐じざとか勤仕とかいう点にあるとすれば、それはかえって家々の節供、または村々の小さな社の祭において、今も厳粛に守られているのであった。
年中行事覚書 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
その枝の先が届かなくなった左の方の二三尺離れたところに検校の墓が鞠躬加きっきゅうじょとして侍坐じざするごとくひかえている。
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
(三) 子路、曾皙そうせき冉有ぜんゆう(求)、公西華こうせいか(赤)侍坐じざせり。
孔子 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
そして老公の側には子飼から召使われているものなので、読書の侍坐じざ、畑の百姓仕事、また外出の折も、かならずといってよい程、ふたりが供をした。
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
病室に通り、三十分ほど枕元に侍坐じざする。私も傍に付き添う。木村は椅子に掛け、私は夫の寝台(私の寝台には病人が寝ているので)に腰掛けて、二三のことを話し合う。
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
と、その日に限って、細川殿はあまりはずまず、声をひそめて、何か折入っての相談があるらしかったが、侍坐じざしているわしをはばかられて、ちょっと、口を閉じた。
茶漬三略 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
信長侍坐じざの諸将が、常に、兵を談ずる側にいて、この少年は、それがいかに深更しんこうに及ぶとも、かつて倦怠けんたいを見せたことなく、一心不乱に、語る人の口元を見ていたと。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼の侍坐じざに、いつもよく見える家臣は、返り新参の本多弥八郎正信であった。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)