伴天連バテレン)” の例文
ワリニヤニ等初期の師父——伴天連バテレン達が、神の福音をつげるに勇ましかったと同時、なかなか実際処世上の手腕をも具備していたことをしる。
まだ信長の世に時めいていたころは、長崎ながさき平戸ひらどさかいなどから京都へあつまってきた、伴天連バテレン修道士イルマンたちは、みなこの南蛮寺なんばんじに住んでいた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ヨワンえのき伴天連バテレンヨワン・バッティスタ・シロオテの墓標である。切支丹キリシタン屋敷の裏門をくぐってすぐ右手にそれがあった。
地球図 (新字新仮名) / 太宰治(著)
正吉 道は判っておいででも、途中で又どんなことがあるかも知れないから、うちの近所まで送りとどけてあげろと伴天連バテレン様のお指図でござります。
人狼 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
男の短刀を逃げてゐるのか将又はたまた切支丹伴天連バテレン仕込みの妖術まがひの愁ひの類ひを逃げてゐるのかまことにハッキリしてゐないが、これもつきあひの美徳であらう
をみな (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
それまでは、——さようなら。パアドレ・オルガンティノ! さようなら。南蛮寺のウルガン伴天連バテレン
神神の微笑 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
さればウルガン伴天連バテレン、とても一人では弘法力に及ばずとて、更に本国より呼寄せたるは、フラテン伴天連、ケリコリ伊留満イルマン。ヤリイス伊留満。この三人もやがて信長公に目通りする。
ハビアン説法 (新字旧仮名) / 神西清(著)
「今がいままで、一のうちに祈祷いのりの鐘をならしていた伴天連バテレンがみょうなそぶりで、ご城内の要害ようがいをさぐり歩いているという小者の知らせでござります」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
弥三郎 おまえも知っている通り、ホルトガルの伴天連バテレンが長崎から天草へ渡り、天草から又ここらへ渡って来て、このあいだから切支丹の教えを弘めている。
人狼 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
サビエルはじめ伴天連バテレン入満イルマンの誠実謙遜な生き方に圧倒されて、敬服せざるを得なくなるのである。
されば信長公の招きを受けたウルガン伴天連バテレン(おや、またウルガンが現はれたぞ!)弘法こうぼうの好機ござんなれと喜びいさんで京を指してのぼつたが、そのとき摂州せっしゅう住吉のやしろ、たちまち鳴動して
ハビアン説法 (新字旧仮名) / 神西清(著)
それを見つつ、呂宋兵衛るそんべえ伴天連バテレン黒服くろふくをつけ、首に十をかけて、ふところには短刀をのんだ。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
古来から切支丹伴天連バテレンの妖術という。伴天連はパードレ、神父の意。新教の牧師に当る。彼らは布教の始めに当って、客寄せというような意味で手品などもやったようだ。
お嬢さんたちと立話をしてゐる私を、その父兄とでも思つたのだらうか、神父はにこやかに私に会釈をしたので、私もあわてて礼を返す拍子に、ふとかのウルガン伴天連バテレン風貌ふうぼうを思ひ浮べた。
ハビアン説法 (新字旧仮名) / 神西清(著)
伴天連バテレン様にもどうぞ宜しく仰しゃって下さい。
人狼 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
今から三百何十年前の話であるが、切支丹キリシタンが渡来のとき、来朝の伴天連バテレン達は日本語を勉強したり、日本人に外国語を教へたりする必要があつた。そのために辞書も作つたし、対訳本も出版した。
ラムネ氏のこと (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)