じん)” の例文
切り立った崖に沿うて行く時には、書物に所謂「一歩をあやまれば」、私は千じんの深さに墜落していたことであろうが、馬の方でそんな真似をしない。
連判状へでも名を書かれたら、千じんの功を一に欠き、それこそ日本が二派に別れ、大戦争になるんだからねえ
任侠二刀流 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
もし又、窓の前が千じんの谷になって居たならば、有無をいわず、この身を投げたであろう。
ある自殺者の手記 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
まつかしはは奥ふかくしげりあひて、二一青雲あをぐも軽靡たなびく日すら小雨こさめそぼふるがごとし。二二ちごだけといふけはしきみねうしろそばだちて、千じん谷底たにそこより雲霧くもきりおひのぼれば、咫尺まのあたりをも鬱俋おぼつかなきここちせらる。
けなす場合は九じんの底まで落します。或る人の詩を批評した中に、非常な誤りばかりに充ちてゐるがその中もつとも大きな誤りは、これを印刷したといふことであるなどゝいつてをります。
ポーの片影 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
大同ダムでき止められて、本来の懸崖の三分の一以上、二百じんも高く盛りあがったその水際みずぎわには、すなわち現実におけるうおは緑樹のこずえにのぼり巉岩ざんがん河底かていの暗処に没して幽明ゆうめいさらに分ちがたい。
木曾川 (新字新仮名) / 北原白秋(著)