仏性ほとけしょう)” の例文
旧字:佛性
船室にりて憂目うきめいし盲翁めくらおやじの、この極楽浄土ごくらくじょうど仏性ほとけしょうの恩人と半座はんざを分つ歓喜よろこびのほどは、しるくもその面貌おももちと挙動とにあらわれたり。
取舵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
やはり仏性ほとけしょうの藤六が、閑暇ひまさえあればソンナ善根をしているものと思って誰も怪しむ者なんか居なかった。
骸骨の黒穂 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
御利益ごりやくうたがいなく仮令たとい少々御本尊様を恨めしきように思う事ありとも珠運の如くそれを火上の氷となす者にはもとより持前もちまえ仏性ほとけしょういだし玉いて愛護の御誓願ごせいがんむなしからず
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
アパート支配人江川作平さくへい氏とその老妻おこまさんは、家賃の取立などは随分きびしく、因業者いんごうものの様に云われていたが、二人とも実は仲々の仏性ほとけしょうで、みなし児蘭子を
江川蘭子 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「そうだろう、こんな生き物を可愛がる人は、やっぱり仏性ほとけしょうなんだよ。ところで、八、お前はここで見張っていてくれ、俺はちょっと隣の部屋へ行って来るから」
仏性ほとけしょうがあるというのか、神社仏閣というといちいちお賽銭さいせんを奉ったり、長々と祈願をこめたりばかりしていて、今日も、この住吉だけで、ほとんど一日暮れてしまいそうだ。
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
お神さんを養生させるだけが楽しみといったような仏性ほとけしょうのお爺さんが、怨みも何も無い、思いがけない人間から、思いがけない非道ひどい殺され方をしたんだからね。
山羊髯編輯長 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「それ旦那があんなにおっしゃるじゃないか。鬼になるのは私のような仏性ほとけしょうの者に限るとよ」
それとも藤六がどこかで発見した無縁仏の骸骨を例の仏性ほとけしょうで祭ってやっていたものかも知れない。
骸骨の黒穂 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
殺すのさえ嫌いな仏性ほとけしょうだよ、つまらない事を言っておくれでない