人為じんい)” の例文
旧字:人爲
材料の精選とともに材料の原味を殺さぬこと、その味というものは、科学や人為じんいでは出来ないものでありますから、それをとうとぶのであります。
日本料理の基礎観念 (新字新仮名) / 北大路魯山人(著)
「——主燈の消えたのは、人為じんいではない。怒るを止めよ。天命である。なんの魏延のとがであるものか。静まれ、冷静になれ」
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ひとり上等と下等との大分界だいぶんかいいたりては、ほとんど人為じんいのものとは思われず、天然の定則のごとくにして、これをあやしむ者あることなし。(権利を異にす)
旧藩情 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
コンと云う金属性の美しい余韻よいんを曳くようにするにはある人為じんい的な手段をもって養成するそれは藪鶯のひな
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
これを食物にたとえて云えば、諸種の材料を混和した調味と、刺身の如き焼肉の如き、材料その物の味いとの如きものである。人為じんいの勝った味い、自然の勝った味いとの差である。
歌の潤い (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
そればかりか人智じんちのレベルは、さっぱり向上しなかった。なぜ昔の人間は、そこに気がつかなかったんだろう。人為じんい的に人体改造進化を行う事によって病気と絶縁ぜつえんする。それから人智を高度にあげる。
海底都市 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「しかも、今夜にかぎって、漆壺うるしつぼのような闇夜ときている。あきらめようじゃねえか。人為じんいは尽したぜ」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
人為じんいの習慣というも、そのへんはこれを人々にんにんの所見にまかして問うことなしといえども、ただ平安を好むの一事にいたりては、古今人間の実際に行われてたがうことなきを知るべきのみ。
教育の目的 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
なんぞ必ずしも区々たる人為じんいの国をわかちて人為の境界を定むることをもちいんや。いわんやその国をわかちて隣国と境界を争うにおいてをや。いわんやとなりの不幸をかえりみずしてみずから利せんとするにおいてをや。
瘠我慢の説:02 瘠我慢の説 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
いや、人為じんいばかりではない、時の勢い——。
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)