ほん)” の例文
那処あすこに遠くほん小楊枝こようじほどの棒が見えませう、あれが旗なので、浅黄あさぎに赤い柳条しまの模様まで昭然はつきり見えて、さうして旗竿はたさをさきとび宿とまつてゐるが手に取るやう
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
此方こちらも会ふのが億劫おくゝふで、いつか/\と思ひながら、今だに着手ちやくしゆもせずにると始末しまつです、今日こんにちお話をるのはほん荒筋あらすぢで、年月ねんげつなどはべつして記憶きおくしてらんのですから
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
何しろその晩内へ舁込かつぎこんだ時は半死半生で、ほんの虫の息が通つてゐるばかり、わたしは一目見ると、これはとても助るまいと想つたけれど、割合に人間といふものは丈夫なものだね
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
聞けばあの富山の父と云ふものは、内に二人おもてに三人も妾を置いてゐると云ふ話だ。財の有る者は大方そんな真似まねをして、妻はほんの床の置物にされて、はば棄てられてゐるのだ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)