井戸側いどがわ)” の例文
丁度四歳の初冬の或る夕方ゆうかた、私は松や蘇鉄そてつ芭蕉ばしょうなぞに其の年の霜よけをし終えた植木屋のやすが、一面に白く乾いたきのこび着いている井戸側いどがわ取破とりこわしているのを見た。
(新字新仮名) / 永井荷風(著)
唯有とあ人家じんかに立寄って、井戸の水をもらって飲む。桔槹はねつるべ釣瓶つるべはバケツで、井戸側いどがわわたり三尺もあるかつらの丸木の中をくりぬいたのである。一丈余もある水際みずぎわまでぶっ通しらしい。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
ちょんさんのおとうとは、「ちょんさんのちたのは名前なまえみじかくって、うんわるいからだ。おれなんかどんなことをしたってちやしない。」といばりかえって、わざと井戸側いどがわにぶらがったり
長い名 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
近々に学校で——やがて暑さにはなるし——余り青苔あおごけが生えて、石垣も崩れたというので、井戸側いどがわを取替えるに、石の大輪おおわが門の内にあったのを、小児だちが悪戯いたずらに庭へ転がし出したのがある。
朱日記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)