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五番町
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ごばんちやう
火は、
尾の
二筋に
裂けた、
燃ゆる
大蛇の
兩岐の
尾の
如く、
一筋は
前のまゝ
五番町へ
向ひ、
一筋は、
別に
麹町の
大通を
包んで、
此の
火の
手が
襲ひ
近いたからである。
もはや、……
少々なりとも
荷もつをと、きよと/\と
引返した。が、
僅にたのみなのは、
火先が
僅ばかり、
斜にふれて、
下、
中、
上の
番町を、
南はづれに、
東へ……
五番町の
方へ
燃進む
事であつた。