乾鮭からさけ)” の例文
冬の凍りついた家の中で、芭蕉は瞑想めいそうふけりながら、骨のように唯一人ですわっている。その背後の壁には乾鮭からさけがさがり、戸外には空也念仏の声が通る。
郷愁の詩人 与謝蕪村 (新字新仮名) / 萩原朔太郎(著)
ひだりへ折れて血塔の門に入る。今は昔し薔薇しょうびらんに目に余る多くの人を幽閉したのはこの塔である。草のごとく人をぎ、にわとりのごとく人をつぶし、乾鮭からさけのごとくしかばねを積んだのはこの塔である。
倫敦塔 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
乾鮭からさけの大きな奴を太刀たちの如くに腰にび、裸同様のあさましい姿で、せた牝牛めうしの上にのりまたがり、えらそうな顔をして先駆の列に立って、都大路の諸人環視の中を堂々と打たせたから、群衆は呆れ
連環記 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
一端の布に包むを覚えけりよね白菜しらな乾鮭からさけを我
晶子鑑賞 (新字旧仮名) / 平野万里(著)
汁気しるけのあるものをことごとく乾鮭からさけにするつもりで吹く。
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)