乗気のりき)” の例文
旧字:乘氣
「さあ、読めるかうか判らんですが、にかくんなものだか、是非一度見たいもんですな。」と、忠一も非常の乗気のりきであった。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
と源次郎は慾張よくばり助平すけべいとが合併して乗気のりきに成り、両人がひそ/\語り合っているを、忠義無類の孝助という草履取が、御門ごもんの男部屋に紙帳しちょうを吊って寝て見たが
やしきの庭が広いから、直ぐにここへ気がついた。私たちは思いも寄らなかった。糸で杉箸すぎばしゆわえて、その萩の枝に釣った。……このおもむき乗気のりき饒舌しゃべると、雀の興行をするようだから見合わせる。
二、三羽――十二、三羽 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
伝法院の唯我教信が調戯からかい半分に「淡島椿岳だからいっそ淡島堂に住ったらどうだ?」というと、洒落気しゃれけと茶番気タップリの椿岳は忽ち乗気のりきとなって、好きな事仕尽しつくして後のお堂守どうもりも面白かろうと
あんじょう、彼はこの事件では、一時はまったく犯人のため飜弄ほんろうされ、死と紙一重かみひとえ瀬戸際せとぎわまで追いつめられさえした)のみならず、彼がこの事件に乗気のりきになったのには、もう一つ別の理由があったのだ。
魔術師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
この調子なら大丈夫と乗気のりきになって出るだけの句をみなかき付ける。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
社長や重役は勿論もちろん乗気のりきで、会社の技術者の忠言は「君たちは西洋科学だけに頼っているから駄目だ。理窟を言っている時ではない」と一蹴いっしゅうされてしまう。事実そういう実例も二、三あったのである。
千里眼その他 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)