両刃もろは)” の例文
えぐられている——それは胸か、腹か、はらわたか知らないが、両刃もろはの剣をもって抉られた瞬間でなければ出ない声だと思われる、大地を動かすうめきでした。
大菩薩峠:37 恐山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
けれどもKは、そのことを見抜いたと信じたばかりでなく、モンターク嬢がひとつの巧妙な、確かに両刃もろはとも言うべき手段を選んだことを、見抜いた。
審判 (新字新仮名) / フランツ・カフカ(著)
其様な事を聞く奴が有るものか、曲者は余程鋭い両刃もろはの短剣を持て来たのだ、両刃と云う事は此傷の形で分る
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
兇器は今、署へ押収してあるが、新聞にもている通りこの机の上に在った鋭い、薄ッペラな両刃もろはのナイフだよ。僕もその死骸に刺さっとる実況を見たがね。
二重心臓 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
理想はもはや、その不可抗不可朽の力たる光明に信念を持たないがようである。剣をもって人を打つ。しかるにいかなる剣も単一なるものはない。あらゆる剣は皆両刃もろはである。
娘の胸には、両刃もろはの剣が刃並はなみを水平に、肋骨ろっこつの間へグサと突き立っておりました。
そうして、切っ先から、四寸ほど下がったあたりから、両刃もろはになっていた。
血曼陀羅紙帳武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
果して卓子ていぶる其他の抽斗ひきだしよりは目科の推量せし通り倉子よりの艶書ふみも出でかつ其写真も出たる上、猶お争われぬだいの証拠と云う可きは血膏ちあぶらの痕を留めしいと鋭き両刃もろはの短剣なり
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
「それにしちゃ、両刃もろはの剣は念入りじゃございませんか、旦那」
「それが両刃もろはの剣だったら、どうなると思う、八」