しばら)” の例文
しばらく此判斷に注意せよ。常理に依るに、是と非とは矛盾の意義コントラアヂクトオリシユにして、その二つのものゝ間に第三以上の意義を容れざるものなり。
柵草紙の山房論文 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
しばらク喜ブ、老身今ひとリ在リ、しかラザレバ当時瀘水ノほとり、身死シテ魂ニ骨収メラレズ、マサニ雲南望郷ノ鬼トナルベシ……」
大菩薩峠:26 めいろの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
もしその方を授くればすなわち永く棄てられん。しばらくかの薬を与え、これを知らざらしめん。薬尽きなば必ず来たって、師資久しかるべしと。
杜甫の「北征行」中の「新たに歸りてしばらく意を慰む、生理いづくんぞ説くを得ん」
萩原朔太郎 (旧字旧仮名) / 堀辰雄(著)
ことトシ/西征わずかおわリテ又東征ス/貧来虁府竛※ノ句/夢裡揚州薄倖ノ名/霜白ク村橋人跡有リ/月寒ク山駅馬声無シ/貂裘敝尽スレドモ尚舌ヲ存ス/しばらク詩書ヲ説キテ耦耕ニ代ヘン〕枕山は
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
天下の勢、滔々とうとうとして日に降り、以て今に至る。その由、けだし一日にあらざるなり。しばらく近きを以てこれを言わん。墨使ぼくし、幕府に入り、仮条約をたてまつる。天子これを聞き、勅を下してこれをとどむ。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
此文は年月日の書きざまが異様で、疑はしい所がないでもないが、わたくしはしばらく「享和之二二月」と読んで置く。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
昔雪山下に雑類無量無辺の諸獣ありて馳遊す、かの獣中に一つの牝虎あり端正無双諸獣中に比類するものなし、諸獣その夫たらんと望む、相いいて曰く汝らしばらく待て共に相争うなかれ
われはしばらく烏有先生に代りて、山房に居て文を論ぜむと。こはまことに山房論文の縁起なり。わが頑冥なる、今の文學界に立ちて評論を事とすべき器にあらず。
柵草紙の山房論文 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
わたくしの京水研究はしばらく此に停止する。今わたくしの知り得た所を約記すればしもの如き文となる。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
われはしばらく逍遙子が上をいはずして、絶對に向ひて説かむ。
柵草紙の山房論文 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)