上梓じやうし)” の例文
芭蕉は俳書を上梓じやうしする上にも、いろいろ註文を持つてゐたらしい。たとへば本文の書きざまにはかう云ふ言葉を洩らしてゐる。
芭蕉雑記 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
百樹曰、余牧之老人が此書の稿本かうほんつき増修ぞうしうせつそへ上梓じやうしため傭書ようしよさづくる一本を作るをりしも、老人がよせたる書中に
百樹曰、余牧之老人が此書の稿本かうほんつき増修ぞうしうせつそへ上梓じやうしため傭書ようしよさづくる一本を作るをりしも、老人がよせたる書中に
肯定に伴ふ新流行の「とても」は三河みかはの国あたりの方言であらう。現に三河の国の人のこの「とても」を用ゐた例は元禄げんろく四年に上梓じやうしされた「猿蓑さるみの」の中に残つてゐる。
澄江堂雑記 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
それから又彼等の或ものは僕の「春服しゆんぷく」を上梓じやうしした頃、絶えず僕に「アララギ」調の写生の歌を送つて来た。歌はうまいのかまづいのか、散文的な僕にはわからなかつた。
変遷その他 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
い加減にペエジを繰つて見れば、牧色ムジイク加夫単カフタン沽未士クミスなぞと云ふ、西洋語の音訳が出て来るのも、僕にはやはり物珍しい。こんな翻訳が上梓じやうしされた事は原著者托氏としも知つてゐたであらうか。
点心 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
剪燈新話せんとうしんわ」を飜案した浅井了意れういの「御伽婢子おとぎばふこ」は寛文くわんぶん六年の上梓じやうしである。爾来じらいかう云ふ怪談小説は寛政頃まで流行してゐた。たとへば西鶴の「大下馬おほげば」などもこの流行の生んだ作品である。
芭蕉雑記 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)