丈夫ますらお)” の例文
虚飾きょしょくをはぎとったのだ。本然の姿に戻ったのだ。剣刀つるぎたち身にうる丈夫ますらおのいでたちとはこれだ! あはははは。どうだ!
なよたけ (新字新仮名) / 加藤道夫(著)
されど事もなき艦橋の上の、韓海の夏暑くしてハンモックの夢結び難きは、ともすれば痛恨うしおのごとくみなぎり来たりて、丈夫ますらおの胸裂けんとせしこと幾たびぞ。時はうつりぬ。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
元義はいもといはでもあるべき歌に妹の語を濫用らんようせしと同じく丈夫ますらおといはでもあるべき歌に丈夫の語を濫用せり。かくの如き者即ち両面における元義の性情をあらはしたる者に外ならず。
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
人の夫として恥しからぬ丈夫ますらおにならせたいといふ、一歩進んだ考へになりました。
こわれ指環 (新字旧仮名) / 清水紫琴(著)
「呉羽之介どの、片里どのの言葉ご用心なされ——学は古今に渡り、識百世をつらぬく底の丈夫ますらおなれど何をねてか兎角とかくおこないも乱れ勝ちな人ゆえ、この人の言うことなぞ信用はなりませぬぞ」
艶容万年若衆 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
とは光俊朝臣みつとしあそんの述懐であるが、歌の「ほとけ」という代りに武士なり丈夫ますらおなりのつよい人格の文字を用いても同じことになる。しかつめらしく具足をつけ威張いばるものは、古来いのしし武士と呼ばれている。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
黄巣こうそう丈夫ますらおのかずにあらずと
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
……以前のあのうち羽振はぶ鶏鳴けいめいの勢いは皆無だ。剣刀つるぎたち身にうる丈夫ますらお面影おもかげは全くなくなってしまった。
なよたけ (新字新仮名) / 加藤道夫(著)
丈夫ますらおはいたもせりき梅の花心つくして相見つるから
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)