一番ひとつがい)” の例文
若布わかめのその幅六丈、長さ十五ひろのもの、百枚一巻ひとまき九千連。鮟鱇あんこう五十袋。虎河豚とらふぐ一頭。大のたこ一番ひとつがい。さて、別にまた、月のなだの桃色の枝珊瑚一株、丈八尺。
海神別荘 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
さるお大名へおさめる事になっている朝鮮渡りのひよどりで、一番ひとつがいで三十両もする名鳥なのに、この稚妓が今、菓子など喰わせたから怒ったのだと口からつばをとばして云った。
春の雁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そこで甲の家のカナリヤを一番ひとつがい選んで乙の家に移し、その後に孵化した雛について、雌雄の割合如何と調べてみると、面白い事には乙の家に来て以後は雄を多く生むようになった。
話の種 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
今また幾年月その包蔵していた水火の割り文を柄のうちより吐きさったにかかわらず、その間、何事もなかったかのように、弥生の白い手に抱きあげられている一番ひとつがいの珍剣稀刀——。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
侍女四 (同じく公子の背後に)鮟鱇五十袋、虎河豚一頭、大の鮹一番ひとつがい。まあ……(笑う。侍女皆笑う。)
海神別荘 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
……大納言こころでは、将軍家は、其の風流の優しさに感じて、都鳥をば一番ひとつがい、そつと取り、くれないむらさきふさを飾つた、金銀蒔絵まきえかごゑ、使つかい狩衣かりぎぬ烏帽子えぼしして、都にのぼす事と思はれよう。
妖魔の辻占 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)