一掬いつきく)” の例文
わかるゝとき一掬いつきくゆきつて、昌黎しやうれいあたへていはく、のもの潮州てうしう瘴霧しやうむさん、叔公をぢさん御機嫌ごきげんようと。昌黎しやうれい馬上ばじやうこれけてそでにすれば、ゆきかぐはしく立處たちどころ花片はなびらとなんぬとかや。
花間文字 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
最高の理想をめざして身悶えながら、汚辱にまみれ、醜怪な現実に足をぬき得ず苦悶悪闘の悲しさに一掬いつきくの涙をそゝぎ得ぬのか。然り。そゝぎ得ぬ筈だ。おん身らは、かゝる苦闘を知らないのだから。
理想の女 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)