一具いちぐ)” の例文
いかり一具いちぐすわつたやうに、あひけんばかりへだてて、薄黒うすぐろかげおとして、くさなかでくる/\と𢌞まはくるまがある。
二た面 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
自分は自分のシカケを取出して、穂竿ほざお蛇口へびくちに着け、釣竿を順につないで釣るべく準備した。シカケとは竿以外のいとその他の一具いちぐを称する釣客の語である。その間にチョイチョイ少年の方を見た。
蘆声 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
べとりと一面青苔あおごけに成つて、欠釣瓶かけつるべ一具いちぐ、さゝくれつた朽目くちめに、おおきく生えて、ねずみに黄を帯びた、手に余るばかりのきのこが一本。其のかさ既に落ちたり、とあつて、わきにものこそあれとふ。
雨ばけ (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)