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らくるゐ
私は
畏つて
聞き
果てると
膝に
手をついたツ
切何うしても
顔を
上げて
其処な
男女を
見ることが
出来ぬ、
何か
胸がキヤキヤして、はら/\と
落涙した。
見るに寶永二年三月十五日の夜
子の
刻出生と
印し
有ければ
指折算へ見るに當年
恰十一歳なり
忘れもせぬ三月十五日の夜なるがお三婆は
頻に
落涙しテモ御身は
仕合物なりとて寶澤が
顏を
見られ
澘々と
落涙せられ此方はよき家來を持て
滿悦に思ふなり三人の
忠節心體見えて忝けなし去りながら我深き存意も有れば
密かに申聞すべし近ふ/\と三人を
側近くこそ進ませたり