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まかりいで
何とも
恐多い
事ではござりますが、
御新姐樣に
一つお
願があつて
罷出ましてござります、へい。
罷出候はゞ、奇特御座候とも、余命
無御座候。まして我等
躰之者罷出、何之奇特も御座
有間敷候得は、罷出
無詮義と存候。当世は
有様正直を
申て、用に
立申儀にて無御座候。
戸外へ伴ひ出し
保養をさせて下されと
言ば忠兵衞心得て
主個の前を
退出けり其年もはや彌生の初旬
木々の
梢に
花咲出徐々と吹く春風も
自然なる温暖さ然ども
息子長三郎は例の如く籠りゐる
障子を