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ひやくゑんさつ
吾妻橋へ
出るやうになつても
客のつくことには
変りがなく、
其の
月の
末にはハンドバツグの
中に
入れた
紙入には
百円札や
千円札がいくら
押込まうとしても
押込めない
程であつた。
道子は
母のみならず
父の
墓も——
戦災で
生死不明になつた
為め、
今だに
立てずにある
事を
語り、
母の
戒名と
共に
並べて
石に
掘つて
貰ふやうに
頼み、
百円札二三
枚を
紙に
包んで
出した。