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しゅらんかん
夏草やつわものどもが、という
芭蕉の碑が
古塚の上に立って、そのうしろに
藤原氏三代栄華の時、
竜頭の船を
泛べ、
管絃の袖を
飜し、みめよき女たちが
紅の
袴で渡った、
朱欄干
舷の
朱欄干に、指を組んで、
頬杖ついた、紫玉の
胡粉のやうな
肱の下に、
萌黄に
藍を
交へた鳥の翼の
揺るゝのが、
其処にばかり美しい波の立つ
風情に見えつゝ、船はする/\と滑つて
熱あるものは、
楊柳の露の
滴を吸うであろう。恋するものは、
優柔な
御手に
縋りもしよう。
御胸にも
抱かれよう。はた迷える人は、緑の
甍、
朱の
玉垣、金銀の柱、
朱欄干、
瑪瑙の
階、
花唐戸。