支配しはい)” の例文
かれらは、こうして、つねにともだちといっしょであったけれど、たがいの支配しはいする運命うんめいは、かならずしもおなじではなかったのです。
からす (新字新仮名) / 小川未明(著)
御米およね廣島ひろしま福岡ふくをか東京とうきやうのこひとづゝ記憶きおくそこに、うごかしがたい運命うんめいおごそかな支配しはいみとめて、そのおごそかな支配しはいもとつ、幾月日いくつきひ自分じぶん
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
番頭傳兵衞でんべゑいへる者あづか支配しはいなし居たるが此處に吉之助をつかはして諸藝しよげいの師をえらみ金銀にかゝはらずならはするに日々生花いけばなちや其外そのほか遊藝いうげい彼是なにくれと是を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
かれにはには節制だらしのないさわぎのこゑみゝ支配しはいするよりもとほかつはるかやみ何物なにものをかさがさうとしつゝあるやうにたゞ惘然ばうぜんとしてるのであつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
それこのていすべて機關きくわん適用てきようしたので、てい進行しんかうも、三尖衝角さんせんしやうかく廻旋くわいせんも、新式水雷發射機しんしきすいらいはつしやき運轉うんてんも、すべてこの秘密ひみつなる活動力くわつどうりよくによつて支配しはいされてるのである。
だが、いままではけんをもつと剣をつかおうとする気に支配しはいされ、ぼうをもつと棒をつかう心にくらまされて、この呼吸こきゅうというものが、いつかまったく忘れていた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
さればがう屋敷田畝やしきたんぼ市民しみんのために天工てんこう公園こうゑんなれども、隱然いんぜんおう)が支配しはいするところとなりて、なほもち黴菌かびあるごとく、薔薇しやうびとげあるごとく、渠等かれらきよほしいまゝにするあひだ
蛇くひ (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ですから當時とうじにおいてすで協同一致きようどういつちして爲事しごとをするひとつの團體だんたい社會しやかいといふものが出來できてをり、またそれを支配しはいしてかしら、すなはち酋長しゆうちようのようなものがなくては
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
目がめるともう夜中であった。星は暗い空にかがやいて、沈黙ちんもくがすべてを支配しはいしていた。時計は三時を打った。わたしはこれで一時間、これで十五分と勘定かんじょうしていた。
……左様さようでございましょうが、お見世みせ支配しはいは、大旦那様おおだんなさまから、一さいあずかりいたしてります幸兵衛こうべえ、あとで大旦那様おおだんなさまのおたずねがございましたときに、らぬぞんぜぬではとおりませぬ。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
そこへ、お前がひょっこり生れ出たことによって、運命的な感情に支配しはいされていたお父さんの生活は急に甲斐がいのあるものに変ってきた。お父さんがお前のために生きるのではない。
親馬鹿入堂記 (新字新仮名) / 尾崎士郎(著)
火山かざんかんする迷信めいしんがこのように國民こくみん腦裡のうり支配しはいしてゐるあひだ學問がくもんまつた進歩しんぽしなかつたのは當然とうぜんである。むかし雷公らいこう今日こんにち我々われ/\忠實ちゆうじつ使役しえきをなすのに、火山かざんかみのみ頑固がんこにおはすべきはずがない。
火山の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
「池の端は親分の支配しはいだ」
大切に勤めし故主人の氣にかなひ店の支配しはいをも任せられ私し儀も安堵あんど致し居候に昨年不慮ふりよの儀にて永のいとまに相成廿餘年の勤功きんこう
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
かれは、まだ羞恥はぢ恐怖おそれとが全身ぜんしん支配しはいしてるおつぎをとらへてたゞ凝然ぢつうごかさないまでには幾度いくたびかへ苦心くしんした。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
「すべてが、偶然ぐうぜん支配しはいされているとしかおもえない。それに、人間にんげんには、つねに六かんがはたらくからだろう。」
考えこじき (新字新仮名) / 小川未明(著)
國際法上こくさいほふじやうからつても「地球上ちきゆうじやうに、あらた發見はつけんされたるしまは、その發見者はつけんしやぞくする國家こつか支配しはいく」との原則げんそくで、當然たうぜん大日本帝國だいにつぽんていこくしん領地りようちとなるべきところである。
たゞなかふくれた。てんなみつてちゞんだ。地球ちきういとるしたまりごとくにおほきな弧線こせんゑがいて空間くうかんうごいた。すべてがおそろしい支配しはいするゆめであつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
いまや鉱坑こうこうの中には絶対ぜったい沈黙ちんもく支配しはいしていた。わたしたちの足もとにある水はごくしずかに、さざ波も立てなかった。さらさらいう音もしなかった。鉱坑は水があふれていた。
この甲府附近こうふふきんに、自分たちがりこんでいることを、まんいち、躑躅つつじさき支配しはいの代官陣屋にでも密告みっこくされては、それこそ、三方にわかれて行動している伊那丸いなまる党友とうゆうの一大事。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
おおくの人々ひとびとは、いろいろの運命うんめい支配しはいされるのでした。だれも、自分じぶん未来みらいについてわからなければ、また、他人たにん生活せいかつについても、わかるものでありません。
ある冬の晩のこと (新字新仮名) / 小川未明(著)
それはあらたまつて不馴ふなれ義理ぎりべねばならぬといふ懸念けねんが、わづかながら彼等かれらこゝろ支配しはいしてるからである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
思ふ道にまよふとか云ひて子をいつくしむ親の心はかみ將軍よりしも非人ひにん乞食こじきに至る迄かはる事なきことわりなり其時また上意に芝八山は町奉行の支配しはいなりとて越前我意がいつのり吟味を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
知れたことだ! 武田伊那丸たけだいなまる留守るす小幡民部こばたみんぶもでていったこのとりでは、もう空巣同然あきすどうぜんかわってきょうからは、大久保石見守おおくぼいわみのかみさまがさがふじ旗差物はたさしものと立てかわり、家康公いえやすこうのご支配しはいとなる。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼等かれらこの抱合はうがふうちに、尋常じんじやう夫婦ふうふ見出みいだがた親和しんわ飽滿はうまんと、それにともなう倦怠けんたいとをそなへてゐた。さうしてその倦怠けんたいものう氣分きぶん支配しはいされながら、自己じこ幸福かうふく評價ひやうかすることだけわすれなかつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
だが、あの宝石ほうせきのもつうつくしいいろや、はなのもついいにおいというものは、かみさまにだけ支配しはいされるものでしょうか? たしかに、人間にんげんこころよろこばせるものにちがいありません。
らんの花 (新字新仮名) / 小川未明(著)
真夜中まよなかごろ、は、あたまうえを、あおほのおをひいてながれるほしました。なんとなく、宇宙うちゅう存在そんざいするいっさいのものが、運命うんめい支配しはいされ、流転るてんすることをかたるごとくにかんじたのです。
しんぱくの話 (新字新仮名) / 小川未明(著)